選挙期間中、なんで挨拶に来てくれないの?
『選挙期間中、なんで挨拶に来てくれないの?』
こんな声をよく聞きます。「選挙が始まる前(つまり告示まで)は来てくれていろんな政策や行政の課題など話してくれたのに、選挙が始まると来てくれないんだね。〇〇さんは来てくれたのに。」と。
告示前でも、投票依頼目的で戸別訪問することはできませんが、政治家としての政治活動や純粋な後援会の入会勧誘はできることとなっています。しかし、告示後にはそれができなくなってしまうのです。
さて、どうして告示後には戸別訪問ができなくなるのでしょうか。それは公職選挙法138条で禁止されているからです。候補者の考えをじっくり聞ける機会でもある戸別訪問がどうして禁止されているのか、また、戸別訪問にまつわる判例などみていきましょう。
戸別訪問は、先にも書いたとおり、しっかりと公約を聴くことができ、また、人柄を感じることができる機会でもあるので、メリットしかないのでは、という考えもあります。しかし、日本では「ダメ」とされています。では、戸別訪問のデメリットも考えてみましょう。戸別訪問は有権者と候補者が、限られたスペースで対峙することとなり(つまり密室的な)、不正行為が起こりやすいといわれます。密室で金品の授受などドラマで見ることがありますね。また、直接訴えることにより、政策よりも義理人情が投票行動に影響を与えてしまう、ということもあります。そして単純に、有権者としては突然の来訪は迷惑なこともありますよね。
そうはいっても、戸別訪問を禁止している公職選挙法は表現の自由を保障する憲法に反しているのでは、と争われたこともあります。最高裁判所は、戸別訪問の禁止は合理性があるとして合憲としています(下級審では戸別訪問を認めてもいいのでは、という考えもあります)。
現行法が良いか悪いか、時代遅れか否か、という議論はともかく、少なくともいまの法律では禁止されている行為なので、やってはいけない、ということになります。
告示後、「Aさんは家に来てくれないのに、Bさんは来てくれた。熱心なBさんに投票しよう。」ということではなく、しっかりとそれぞれの候補者の政策で投票先を決めることができたらいいですね。
2022年6月23日 二瓶裕史