コンテンツ・ツーリズムについて(平成24年6月定例会一般質問その1)

一般質問内容 平成24年6月12日

  1. コンテンツ・ツーリズムについて
  2. 伊那の妖精を活用することについて
  3. さらなる市政の情報発信について

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一般質問の議事録 平成24年6月12日

◆3番(二瓶裕史君) 3番、二瓶裕史です。よろしくお願いします。
 午前中から広報についての質問が幾つか続いていますが、やはりこれまで多くの方で長い年月をかけて研究してきても、これだといった答えがなかなか見つからず、難しいものだなと改めて思いました。言うまでもありませんが、情報発信や広報の目的というのは、身近な市政の実現にあると思います。今回の定例会の一般質問では、身近な市政の実現という大きな柱をよりどころに、以下3点につきまして質問をさせていただきます。1点目は、コンテンツ・ツーリズムについて、2点目は伊那の妖精を活用することについて、そして3点目は、さらなる市政の情報発信についてです。
 まず、1点目のコンテンツ・ツーリズムについての質問をさせていただきます。去る6月3日、国内では64年ぶりとなるオペラ「春香」限定版の上映がなされました。今さら紹介するまでもありませんが、これは伊那市の名誉市民第1号の故高木東六先生が、疎開先の伊那で作曲された日本オペラ草創期の代表作と言われているものです。文化会館の大ホールは超満員、新聞報道によりますと1,400人もの来場があったとのことです。生で触れる文化、芸術はいいものだなと再認識いただいた方も少なくないのではと思っております。今ちょうど市役所の1階でも展示がありますので、ぜひ市役所に来られた方には見ていただきたいと思いますが、さて、この文化というものは、時代によってさまざまな顔を見せてくれます。また地域で特徴的な文化というものは、人を引きつけ、観光へとつながります。今回は、世界で評価の高い日本文化の一つである漫画やアニメについて取り上げてみたいと思います。
 まずその前に、コンテンツ・ツーリズムについての定義を御紹介させていただきます。コンテンツ・ツーリズムとは、映画や漫画、アニメ、ドラマや小説などを動機とした旅行行動や観光振興のことを言います。つまり有形の文化遺産や美しい景観といった既存の物としての観光資源と同様に、コンテンツの価値が認められ、さらに物そのものよりもコンテンツが中心となってツーリズムが構成されるようになるということです。ここで映画や漫画、アニメなどと言いましたが、それだけに限らず、ヘリテージ・ツーリズムという言葉があります。つまり文化遺産観光においても、有形の文化遺産である物から無形の文化遺産であるコンテンツへの関心が広がりつつあるといいます。身近な例としては、大鹿村の大鹿歌舞伎、長谷の中尾歌舞伎が注目をされているところです。もちろん今あるものを大切にし、それらによるツーリズムを考えることは、とても大切なことだと思いますが、もっと多様な誘致を図るとき、考えるときには、このコンテンツ・ツーリズムという考え方を持ってみるのもとても有用ではないかと思います。このコンテンツというのは、物語性を持っている必要があるといいます。人がなぜその地を訪れるのかというと、物語性を味わい、その世界の住人になる、そしてそれが人の心を満たすのです。北海道大学山村先生の著書の言葉をかりるのであれば、世界遺産の法隆寺、物体として見るだけなら、それは単なる木でできた構造物、しかしその背景にある歴史的な物語があるからこそ、人はロマンを感じるというのです。自分の住んでいるまちがさまざまな形で注目されるというのはうれしいものです。注目されると、住んでいる者としてはもっと自分のまちのことを知りたいと思ってきます。最近では、全国放送のテレビ番組で県民性や地域特性を題材としたものが人気となり、同じような題材の番組がふえてきています。そういった番組で伊那地域が取り上げられた翌日には、会社など職場で必ずその話題が上ります。これは自分の住んでいるまちに対して愛着心があると感じる光景であり、この番組によりさらに愛着心が強くなっているとも言えます。市外の友人、知人から、「きのうテレビ見たよ」と言われれば、伊那市のことをきちんと伝えることができなくては恥ずかしいと思いますし、外から伊那に訪れた人に何か聞かれたときには、伊那のことをしっかり伝えることができるように準備をしておきたいとも思ってきます。そういうことから、外からの多様な注目を集めるということは、観光だけではなく、実は市民が伊那市のことや市政について勉強したいと思うきっかけづくりにもなるはずです。間接的に身近な市政の実現にもつながるわけです。
 市長に伺います。まずはこのようなコンテンツ・ツーリズムについて、どのような可能性を秘めているとお考えかお聞かせください。

○議長(伊藤泰雄君) 白鳥市長。

◎市長(白鳥孝君) 観光客の誘致、誘客につきましては、これまでもグリーン・ツーリズムとか、エコ・ツーリズムとか、さまざまな手法、ツーリズムがあったわけであります。このように各素材を紹介して提供することによって、新しいジャンルの観光の皆さん、お客さんがお見えになるという可能性があって、このことについては、伊那市に限らずどこの自治体でも同じ素材はあるわけであります。ただ、その素材をすべて活用するということは難しいもので、やはりその自治体に合ったもの、さらには有効性の高いもの、そうしたものを施策として進めていかなければいけないというふうに考えます。議員のおっしゃるコンテンツ・ツーリズム、これはフィルム・ツーリズムやシネマ・ツーリズム、そうしたものがコンテンツ・ツーリズムというふうにだんだんに変わったということも聞きましたけれども、こうしたことを考えると、伊那市においては伊那谷フィルムコミッションというものが立ち上がって、大変注目をされておるわけであります。映画とかテレビドラマ、あるいはいろんなコマーシャルに、伊那谷、この伊那市を含めたこの地域を訪れてもらって発信をすることで、そうした観光振興につながっていくということになります。ちなみにというか、先日、伊那市の芸術文化大使に任命を、委嘱をしました日本を代表する映画監督の三谷幸喜さんも、このフィルムコミッションが御縁でこの地域で映画を撮られて、伊那の大ファンになったということでありますので、ある意味このコンテンツ・ツーリズムというのは、そのことだけではなくて、そのことに携わる人を媒体としてやることによって、さらに深まりとか広がりが増すのではないかと思います。観光振興のためには、まず市外からのお客様ということは、昔から常套手段として言ってはいますけども、やはり来る皆さんのニーズととらえなければ、一方的に発信をしても、これは観光にはつながっていかないわけであります。観光というのを産業にするということを私が常々言っているわけでありますので、そうしたときにやっぱりストーリーをきちんと描いて、何年かたったらこういう形になるということまで含めてやっていかなければ、単にお客さんが来たから観光が成功したということにはならないと思います。
 このコンテンツ・ツーリズムの可能性については、伊那市の特色ある観光資源、例えば山岳の景観とか、あるいは農村景観もありますし、里山の景観もあります。今伊那市の通り町、あるいは高遠町の市街地、しんわの丘ローズガーデンといった、あのバラが大々的に広がりを見せております。ちょっと前は桜もありましたし、ボタンもありました。歴史的な建造物があったり、伝統的な祭りがあったり、高遠そば、ローメン、さまざまな食を通じて、そうしたコンテンツ・ツーリズムを活用するといったことが必要であろうかと思います。

○議長(伊藤泰雄君) 二瓶議員。

◆3番(二瓶裕史君) 今おっしゃられたとおり伊那谷フィルムコミッションの皆さんの御活躍の成果で、かなり多くの映画やドラマの撮影に来られているということはすごいなと思っています。今回のコンテンツ・ツーリズム、今市長がおっしゃるように、来る人のニーズをとらえてということなんですが、このコンテンツ・ツーリズムで成功しているまちというのは、やっぱり来る人はどういうことを目的として来るのか、どういうものが欲しくて来るのかという、そういう要求や要望なりをしっかり分析をして、商工会だとか行政、それから地元の企業などと話し合いを、話し合いというか戦略会議などを開きながら、じゃあそのアニメや漫画の背景としてとらえられた場合、それにどう乗っかっていくかというのを、毎晩のように戦略会議を開いていたということも聞きますが、確かにそういう発信する側だけのひとりよがりじゃだれも来ませんので、どういう要望があるか、要求があるか、そういったものを考えていかなきゃいけないなというのは、確かにそのとおりだと思います。
 それからコンテンツ・ツーリズムについてですが、これに取り組んでいる自治体ってかなり最近ふえているようです。戦略的に取り組んでいる自治体かなりあるようですが、ほかの市町村でこのようなコンテンツ・ツーリズムについての成功例などをもし把握していたら教えてください。

○議長(伊藤泰雄君) 白鳥市長。

◎市長(白鳥孝君) 私が知っているところであれば、「究極超人あ~る」という、これ田切駅なんですけども、飯田線の田切駅は伊那の飯田線の中で余り知られてないというか、余り乗降客はいないんですけども、日本の中で一番最初に知られた無人駅として今でも人気であります。その田切駅から伊那市駅を目指して1時間で自転車で走ってくるという、電車と競争するみたいな、そのようなことを使ったアニメがあったりしております。今でもこの田切駅には全国からいろんな皆さんが来て、掃除をしたり、いろんな発信をしたりということをやっておるようでありまして、私も行ってみると、やはり大事にされている駅だな、大事にされている飯田線だなという思いがします。
 そのほかの、この最近では「伊那市の暮らし100年」ということの取り組みで、飯田線の100年の暮らしを追っている取り組みがあります。飯田線伊那市駅ができて100年、飯田線が走って100年、つまり伊那に電気が通って100年という、そうしたことを今後長い目で取り組んでいくということになろうかと思いますので、こんなことも使えるのではないかと思っております。
 あと、そのほかの市町村での施行例としては、インターネットで見てますと、新潟県の自治体で協議会を発足しているようであります。これが成功しているかどうかというのはちょっとわかりませんが、フィルムコミッションの活動というのは、全国的に展開されておりますので、県内でもテレビや映画の舞台となったところは、観光地としては人が来ると。先ほど私が言いましたけれども、来る側の皆さんのニーズを上手にとらえていかなければ、観光としては成り立たないと思いますし、一過性に終わってしまいます。戦術が失敗したものを戦略では補うことはできませんので、そうしたことをやっぱり当初からきちんとした企画を立てて、どんな皆さんに来てもらって、どういう変化、どのような形まで持ち込むのかということをやっていかないと、これがいいからやりましょう、あれがよさそうだから取り組んでみましょうとかいうことだけでは、やっぱり観光というのは成功しないと思いますので、この議員のおっしゃったコンテンツ・ツーリズムも一つのツールとして、その広がりがさらに大きくなるのであれば、そうしたところに戦術を持ち込んで取り組んでいくということが必要ではなかろうかと思います。

○議長(伊藤泰雄君) 二瓶議員。

◆3番(二瓶裕史君) 確かにこのコンテンツ・ツーリズムの話が出ると、必ず一過性の問題で終わる可能性があるので、余り力を入れてできないというような意見も出てくるようです。ただ、この一過性で終わるからやらないのか、一過性で終わる、終わった後もどういうふうに伊那市がなってしまうのかというのも問題で、ただ外の人が一気にだーと押し寄せて、伊那のこれまであった文化とか環境を破壊して帰ってしまうのか、それともコンテンツ・ツーリズムというお金をかけないでやって、一過性でもいいから人がたくさん来ることで、伊那市にとってのメリットというのも当然あると思うんです。一過性で過ぎちゃったからそれは悪いというわけではなくて、一過性で過ぎたことにもメリット、デメリット当然あると思うので、そういうことを考えながら検討していかなきゃいけない問題かなと思いますが、今市長がおっしゃったようにあ~るですね、究極超人あ~るに関しては、実はコンテンツ・ツーリズムの中でも、アニメとかで取り上げられて、それに観光として乗っかろうというアニメ・ツーリズムという言葉があって、実はアニメ・ツーリズムの元祖が伊那市だというふうに言われているんです。もうこのあ~る20年ぐらい前のアニメなんですが、今でも本当にファンが多くて、田切駅から伊那市駅まで訪れる観光客も多いですし、また最近では新聞報道でもありましたが、市の職員の有志の方、サイクリングイベントでこのあ~るを再現しようということで、それも大きく新聞報道されて、ネットの中ではかなり話題になってます。県外の人は、おれも必ず行くよとかいうふうに言って、それは本当かどうかは知りませんが、そういう書き込みをしていたりとか、こういうことをする伊那市ってすごいなと、市長すごいなという、市長は多分かかわってないと思うんですけれど、そういうふうな評価というか、こういうちょっと奇抜なものをねらってばかりいては、それは地に足がついた政策と言えないので、それをねらうわけではないですが、こういったことでうんと全国的に名前がまた出るというのも、それだけで伊那市にとってはかなりPR効果があるんだと思います。
 このほかの市町村でのコンテンツ・ツーリズムで新潟の例を出していただきましたが、ほかにこのコンテンツ・ツーリズムを語るときに必ず出てくる地名というのが、埼玉県の旧鷲宮町というところです。観光とほとんど縁のなかった人口3万4,000人の小さな町が、とあるアニメの舞台になったことから、国内外からファンが押し寄せ始めたというのです。オープニング映像で使われた鷲宮神社の知名度は急上昇し、アニメ放映前は年間9万人だった初もうで参拝者は、アニメ放映翌年の2008年には30万人、9万人から1年で30万人になった。2010年、その2年後には45万人と、3年間で5倍になったということです。経済効果は20億円とも言われています。この鷲宮町の事例は、それほど知名度が高くない作品をファンの人と地域社会が一緒になって盛り上げていったという点が画期的であったと、さきに言った著書で記されておりました。この事例以降、国においても経済産業省や官公庁主催によるアニメと観光についての会議やフォーラムが実施されています。伊那市においても本格的に調査・研究をしてみる価値があると思いますが、いかがでしょうか。また映画に関しては、伊那谷フィルムコミッションの皆様の御尽力で、先ほども言いましたが、大きな成果を生んでいますが、これまでその伊那谷フィルムコミッションのほうで、アニメや漫画についてもこういった誘致の対象としてきているかどうかお聞かせください。

○議長(伊藤泰雄君) 白鳥市長。

◎市長(白鳥孝君) アニメに関してのFCの誘致というのは、ちょっと聞いてはいないのですが、どうもないようですね。とはいえ、この風土というか、地域については、可能性がゼロではないわけでありますので、そんなことも探りながら提案をしていけば、そうした可能性も十分あろうかと思います。

○議長(伊藤泰雄君) 二瓶議員。

◆3番(二瓶裕史君) ありがとうございます。このコンテンツ・ツーリズムに期待される効果としては、以下、これから挙げる4点を挙げている方もいます。まず当然地域の経済振興、それから住民の地域への愛着心向上に寄与することができる、それから地域独自の物語性を創出することができる、それから時間消費型の余暇の過ごし方を提供できると。先ほどちょっと話しましたが、物語性を味わうために来るということで、この地に滞在してもらいやすい観光だというわけです。例えば何かの物を見に来たとか、何かをしに来たというわけじゃなくて、あの登場人物はここを歩いたなとか、こういう景色を見たのかというのは、滞在型観光になりやすいということで、そこで御飯を食べたり、じゃあこの宿泊まってということで、その地に滞在して物語性を味わって、その世界の住人になることを目的として訪れてもらうということは、経済効果が出やすいというふうにも言われています。近隣では上田市や大町市の例もあります。最終的には伊那市のファンを生むためのものです。外国人の誘客、いわゆるインバウンド政策を考える上でも、注目すべき考え方だと最近言われています。また、この初めに触れた高木東六先生の「春香」もそうですが、代表作の「水色のワルツ」なども、疎開してきたときに伊那で作曲されたものだと聞きます。伊那のこのアルプスの間を勇壮に流れる天竜川のほとりを歩きながら作曲したとも言われます。そういった話を使って、この景色を見ながらこの曲はできたんだという物語性を感じてもらいながら観光者に伊那の地を歩いてもらう。それもまさしくコンテンツ・ツーリズムの考え方です。最後に一言何かいただけましたら、お願いします。

○議長(伊藤泰雄君) 白鳥市長。

◎市長(白鳥孝君) 先ほどちょっと触れましたけども、観光というのはいろんな手法がありますので、議員おっしゃるそのコンテンツ・ツーリズムというのも、そのツールの一つとしてとらえていけばいいわけであります。先ほどバラの話をしました。伊那谷の風景と、バラの、今広がりというのは、ある意味その物語という点においては「水色のワルツ」にもくっつくかもしれないし、またバラというものの人気を上手に使った、またこの地域ならではという、そんなものも展開が可能でありますので、その観光の行き着くところ、観光の求めるところの姿をよく描いて、その中にコンテンツ・ツーリズムというのを組み込むのであれば、私は非常に効果があると思っております。さっき言った戦略が間違っていれば、どんな戦術があってもこれを補えませんので、そうしたことをまずきちんと観光に関係する皆さん、単なる観光ということではなくて、教育でも、環境でも、健康でも観光になりますので、農業でもなるわけですね。そんなものを縦糸、横糸を上手に組み合わせて、将来像を描いて、そこで取り組んで物語をつくっていくということであれば、私は大変大きな可能性が含まれているという考えが持てると思います。

○議長(伊藤泰雄君) 二瓶議員。

◆3番(二瓶裕史君) このコンテンツ・ツーリズムを主力にしてとかいうわけではなくて、そのツールの一つとしていろんなものと組み合わせて考えていただければいいかなと思いますので、よろしくお願いします。

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